災害時の医療においては、迅速な対応が求められる救急隊や看護師は全ての患者さんを状態別に分類して重症な方から医療を行わなければなりません。その分類方法には外傷などの重傷度を評価するほかに、頭を打った時などに意識について調べることが行われます。この意識について調べる方法は目が開くかどうか、呼びかけに対して正常な反応を示すか、といった項目を見ています。この時、は「今は何時ですか」「ここはどこですか」などの簡単な質問を行いますが、方言や訛りがひどく救急隊や看護師に意志が伝わらない場合があります。そうすると、「何かよくわからないことを言っている」と判断されてしまいかねず、意識障害に分類されてしまう可能性があるのです。

しかし、このように意識障害を疑われてしまった場合に受ける不利益は訛っている方に降りかかるものではありません。むしろ、より重症患者に分類されてしまうことで、災害時の限りある医療資源を本来軽症のはずの患者さんに割いてしまうことが災害現場では問題なのです。災害時は一人でも多くの命を救いたい、その一心で皆動いています。包帯、点滴など限りある医療設備の消費が他の患者さんの命を救えなかった、という顛末に陥らないように気をつけなければなりません。パニックに陥りがちな災害現場において、落ち着いて伝わるように救急隊に応対することが何より重要です。東日本大震災をきっかけに近年各地で起こる災害時には、このような事例は少なくなく、方言問題として災害時の新たな課題が浮き彫りになったのです。

訛りや方言は個性もあり、本来安心感や魅力が多くあるものですが、時には思わぬトラブルを引き起こしてしまう可能性があることも知っておかなければなりません。その備えとして、各地方出身者による方言講座や、医療でよく出る言葉の方言テキストの配布なども行われています。救急隊や看護師だけでなく、医療関係者が各地方の方言を習得するか、標準語でなくてもきちんと万人に伝わるような言葉の引き出しを普段から用意しておくべきでしょう。